お化け茶釜

むかし、むかし、ある所に博打人が住んでいました。持ち金全部すって家に帰る途中、狸に会いました。
「狸どん。お願いがあるんだけど。」
「何だい。」
「ちょっと茶釜になってもらいたいんだ。」
「お昼をごちそうしてくれたら、いいよ。」
しばらくして、男は狸にお弁当を持ってきました。
「狸どん。お昼を持ってきたよ。」
狸は、お昼を食べ終わると、あっという間に茶釜に変わりました。
男は、それを風呂敷に包むと、山寺の和尚さんの所へ持って行きました。
「和尚さん。上等の茶釜が手に入りました。三千円で買ってもらえないでしょうか。」
和尚さんはとても気に入り、買ってやりました。
和尚さんは、小坊主を呼ぶと、こう言いました。
「前の川に行って、この茶釜を磨いてきなさい。」
小坊主が、一生懸命ゴシゴシこするものですから、狸は痛くて仕方ありません。
「小坊主さん。痛いよ。やさしくこすってよ。」
小坊主はビックリしてお寺に戻ると、和尚さんに言いました。
「和尚さん。茶釜がしゃべったよ。」
「心配無用じゃ。新しい茶釜はそういうことがよくある。」
小坊主は、茶釜に水を入れると、かまどの火にかけました。
「小坊主さん。熱いよ。火を消してくれよ。」
小坊主はビックリして和尚さんに言いました。
raccoon's kettle 「和尚さん。茶釜がまたしゃべったよ。」
「心配無用じゃ。新しい茶釜はそういうことがよくある。そのままにしておきなさい。」
小坊主が、火をたき続けると、何と、茶釜から耳が出てきました。
小坊主はビックリして和尚さんに言いました。
「和尚さん。茶釜から耳が出てきました。」
「和尚さん。茶釜から顔が出てきました。」
「和尚さん。茶釜からしっぽが出てきました。」
「和尚さん。茶釜から脚が出てきました。」
和尚さんは言いました。「新しい茶釜はそういうことがよくある。」
狸はかまどから飛び降りると、山の方へ逃げていきました。(2004.8.13)

Raccoon's kettle