大魔神

むかし、むかし、静かな平和な村の山のふもとに埴輪が祭られていました。大昔、その埴輪は悪者から村を守ったと信じられていました。
その年は、日照りで作物はほとんどとれませんでした。沢山の村人が餓え死にましたが、村人たちは必死で助け合いました。
ある日のことです。作物を奪おうと、ついに外から村へ悪者たちが侵入してきました。男だけでなく、女、子供、赤ん坊でさえも手当たりしだい殺されました。村人たちは殺される以外、なすすべがありませんでした。
家族を殺され一人ぼっちになった一人の娘が、やっとのことでその埴輪の所まで来ました。
「神さま、どうか助けてください。悪者たちから村を守ってください。」目に涙を一杯にためて心の底から祈りました。
一滴の涙が埴輪の上に落ちました。すると、空が暗くなり、地面が揺れ始めました。埴輪はどんどん大きくなり、ついには巨大な大魔神へと変わって行きました。顔の前で腕を交差させると、その顔は怒りで真っ赤になりました。
daimajin 大魔神は、大きな地響きと共に、村の方にゆっくりと歩いて行きました。
悪者たちは、剣や弓矢で大魔神相手に戦いましたが、無駄な抵抗でした。大魔神に踏みつけられ、摘み上げられて投げ飛ばされるだけでした。四方八方に逃げ、村には侵入者は一人もいなくなりました。
大魔神は、山の方に身をひるがえすと、元の場所までゆっくりと戻って行ききました。
大魔神は、顔の前で腕を再び交差すると、どんどん小さくなり、元の埴輪に戻りました。
村に平和が再びやってきました。埴輪は静かに村を見下ろしています。(2004.2.25)

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