若者の両親は、娘がこれまでに出会った数々の苦労を思い、同情の念を禁じ得ませんでした。両親は、その娘が、優雅さ、美しさ、教養を備えた、息子にふさわしい嫁であることを認めました。娘が自分の過ぎこし方を明かしたことはありませんでしたが、二人の結婚に何の障害にもなりませんでした。
娘は三人の子宝にも恵まれ、夫と幸せな日々を送っていました。一つ気がかりなことは、実の父のことです。出家して修行僧として諸国を行脚している、といううわさを耳にしました。何でも出家を決意した大きな理由は後妻の冷酷さと金遣いの荒さとのことでした。娘はかわいそうな年老いた父に会って孫の顔を見せてあげたいと思いました。
一方、父親は行き先々のお寺で観音さまにお願いしました。
「娘がまだ生きていたら、どうかもう一度逢わせてください。自分の愚かさをわびたいと思います。」
ある日のこと、ある寺にお参りしていました。すると三人の子供を連れた若者が自分の方にやって来ました。子ども達を見て、父親は突然泣き出しました。若者は驚いて、声をかけました。
「どうしたのですか。」
「気にしないで下さい。実は、十三歳のとき家から追い出した娘の面影に、この子供達がどこか似ているのです。」
年老いた僧はことの顛末(てんまつ)を若者に話しました。若者は他人事には思えず、僧を案内して家に帰りました。妻はその瞬間、僧の顔をじっと見つめ、嬉しさに思わず叫びました。
「お父さん、私よ、あなたの娘よ。この人は私の主人。それにこの子供達はお父さんの孫よ。」
「夢に違いない。これが夢でないとすれば、娘と再会できたのは観音さまのおかげだ。」
父は娘の家族に迎えられ、それからずっと娘の家族と一緒に幸せに暮したとのことです。(Kudos)おとぎ草子物語より
A Girl With a Bowl on Her Head-Misfortune-