屁こき女

musume むかし、むかし、ある所に心やさしい娘さんが住んでいました。しかし、ただ一つ難点がありました。娘さんは、人前でもおならを我慢することが出来ませんでした。娘さんは、結婚の望みもあきらめていました。
しかし、ある日のことです。娘さんに人目ぼれした長者の息子さんが結婚を申し込みに娘さんの家に来ました。
娘さんの両親はわれを忘れて喜び、申し込みを受け入れました。
母親は、婚礼の前日、たいそう心配して、娘さんに言いました。
「よーく聞きなさい。夫の前であろうと、人前であろうと、絶対おならをしてはなりませんよ。どんなことが起きても、おならを我慢しなければいけませんよ。家から追い出されてしまいますよ。いいですね。」
waterfall 娘さんは、心やさしく働き者でしたので、夫からも夫の両親からもたいそう大事にされました。数日は、何とかおならをするのを我慢できましたが、とうとう五日目、ご飯を食べている時、大きなおならをしてしまいました。
「何てことを。」と姑が言いました。
娘さんは、とても恥ずかしくて家を飛び出しました。
「お母さんから、おならをしてはならない、と言われていたのに。もう家には帰れない。」
娘さんは、あちこちを歩き回ったあげく、山の滝のところにやってきました。座り込んでしばらく泣き続けました。そして、ついには滝に身を投じて命を落としてしまいました。
妻の死を聞いた夫も、妻が身を投げた滝の所にやってきました。
「かわいそうなことをしてしまった。お前がいなくては生きていても仕方ない。私もお前の所に行く。」
夫も滝に飛びこみ、命を落としました。
息子の死を聞いた両親も、若夫婦が身を投げた滝の所にやってきました。
「かわいそうなことをしてしまった。嫁のことを笑った私たちが間違っていた。お前がいなくては、生きていても仕方ない。私たちもお前の所へ行く。」
長者とその妻も滝に飛びこみ、命を落としました。娘さんの両親も滝に飛び込み、命を落としました。夫の親戚も、娘さんの親戚も次から次へと滝に飛び込み、命を落としました。
「長者さんがいなければ、生きていても仕方ない。死ぬしかない。」
長者と、長者の家族、親戚の死を聞いて、村の人々も滝の所に行き、次から次へと身を投げ、命を落としました。とうとう、村には誰もいなくなってしまいました。(2004.1.3)

heonna