
運のいい狩人
むかし、むかし、山に若い狩人が住んでいました。毎日、鉄砲を持って山に狩りに出かけました。でも、狩りが下手で、まだ何も獲れませんでした。
ある日、いつものように山に狩りに出かけました。木の枝に鳥がとまっていました。
「山に入ってすぐ獲物を見つけた。何と運がいいんだろう!」鉄砲を撃ちました。バン!
でも、狩りが下手で、弾丸(たま)は外れて、あちこちはね返り、いのししのお尻に当たりました。いのししは怒って向かって来ました。ドンドン!
「助けて!」と叫んで、大きな木に登りました。いのししは木に衝突し死んでしまいました。
「いのししが手に入ったぞ。何と運がいいんだ!」と言うと、近くのクリの木に太いつるを見つけました。
「このつるで、いのししを縛って背中に担いで行こう。何と運がいいんだ!」と言うと、思いっきりつるを引っ張りました。
つるを引っ張ると、クリの実がたくさん木から落ちてきました。
「クリが手に入ったぞ。何と運がいいんだ!」と言って、大きな袋に入れました。
大きないのししとクリの入った大きな袋を担いで、川までやって来ました。丸太が一本掛かっていました。
「この丸太の上を歩くのは危ないが、渡らなくてはならないな。」と言うと、狩人は恐る恐る渡り始めました。でも丸太の真中で、バランスを失い、川に落ちてしまいました。
「助けて!」と叫ぶと、手に触れたものを引っ張りました。そして向こう岸にたどり着きました。何と、掴んだのはうさぎでした。
「うさぎが手に入ったぞ。何と運がいいのだ!」と言うと、地面から突き出ているものを見つけました。引っ張って見ました。やまいもでした。
「やまいもが手に入ったぞ。何と運がいいんだ!」と言うと、何かが着物の中で動いていました。こいでした。
「こいが手に入ったぞ。何と運がいいんだ!」と言うと、嬉しくて飛び上がりました。
帰り道、長者さんの家の前を通り過ぎました。すると、長者が声をかけました。
「狩人さん、屋根にからすがいてうるさいから鉄砲で撃ってくれないかな。」
「長者さん、弾丸がきれて駄目なんだ。」と鉄砲が下手なのを思い出して言いました。
「じゃあ。弓矢を貸してやろう。」と言って、長者は持って来ました。
狩人は一回も使ったことはありませんでしたが、断れませんでした。
「やあっ。」と叫ぶと、思いっきり弓をひき、矢を放ちました。でも弓矢も下手です。矢は的を外れて飛んでいきました。
「いたっ!」誰かが声をあげました。長者の倉から忍び出てきた泥棒でした。それを見ていた長者は狩人に言いました。
「からすをうつふりをして、泥棒をうつとはお見事じゃ!是非娘の婿になって家を継いでもらいたい。」
「何と運がいいんだ。!」大喜びで了解しました。
狩人は長者の娘と結婚し、いつも運良く、幸せに暮らしました。(Kudos) 原作:T.小沢