
大きなかに
むかし、むかし山奥に若いきこりが住んでいました。
ある日のことです。大きな滝にかかる高い木を切っていると、斧を滝壷に落としてしまいました。
すると、赤い岩のような、得体の知れない大きなものが浮かび上がって
きたので、恐ろしくなって逃げ出そうとしました。そこに住んでいる怪物が怒ったと思ったのです。でも、美しい声で呼びとめられました。
「おにいさん、ちょっと待って。」
降り返ると、水の上に、斧を持った天女が立っていました。
「斧を落としてしまってすみません。それは私のものです。」と斧を指差しながら言いました。
「助けてくれてありがとうございました。私は、この滝に長年住んでいる天女です。最近、この大きなかにがこの滝を気に入り、ここに住み始めました。とても獰猛なので、とても恐ろしく思っていました。でも、斧が落ちてきて、かにに当たって、かには死にました。これからは今までのように平和に暮らすことができます。何か欲しい物があれば、願いをかなえてあげます。」と天女が言いました。
「家に病気の妻がおります。昔のように元気になってもらいたいと思っております。それが私の望みです。」と若者は言うと、天女から斧を受け取りました。
家に戻ると、元気な妻が夕飯の用意をしていました。めでたし、めでたし。(2004.1.13)