かわず女房

minka むかし、むかし、ある所に若者がおりました。そろそろ所帯を持ちたいと思っていました。
いつもこんな風に言っていました。
「明るく働き者の娘(こ)と一緒になりたいな。」
念願かなって、男は近所の人の紹介で所帯を持つことになりました。新婦はいつも笑顔で朗らかでした。そして毎日朝から晩までよく働きました。男はすっかり気に入り幸せに13年が経ちました。

ある日、妻が夫に言いました。
「明日は死んだお父さんの13回忌です。お暇をとってよいでしょうか。」
「勿論だよ。お前はここに来てから一回も帰ってない。2,3日実家でゆっくりしておいで。」と言ってふと思いました。
「妻はどこからきたのだろう。家のことや、親のことや、子供時代のことは何も聞いていない。」

frog 次の朝、妻は家を出ると足早に実家に向かいました。そして夫はこっそり後を追いました。
「どこに行くんだ。ここからは田んぼしかないぞ。」
田んぼのまん中に来ました。かえるの鳴き声があちこちから聞こえてきました。妻は立ち止まって宙返りをすると、かえるになり田んぼに入りました。夫はとても驚いて田んぼのあぜに腰を落とし、石を拾うと田んぼに向かって投げました。一瞬、静かになりました。夫は必死に家に走りました。
その晩、妻も帰って来ました。
「法事は無事終わったかい。」
「法事の最中にとんでもないことが起きたの。石が空から降ってきて、お坊さんの頭に当たって怪我をして、法事は延期になったの。」
「石を投げたのは俺なんだ。」夫は妻の顔を見ました。
「そうだったんですか。」妻は悲しくなりました。
そう言うと、宙返りをしてかえるになり、二度と戻って来ることはありませんでした。(Kudos)

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