金太郎

kintaro1 むかし、むかし足柄山に金太郎という男の子と母上が住んでいました。父上は京の都の武士で敵に捕らえられ殺されてしまいました。
母上は、敵から逃れ、小さな金太郎を連れて山奥に入りました。
「この子を夫のような一人前の武士にしなければなりません。」
親子は洞窟の中にかくれ暮らしています。木の実や野イチゴなどを取ってきては金太郎に与えていました。かつてはとても美しかった姿も今は色あせてしまいました。着物も汚くなり、擦り切れていました。しかし必死に金太郎を育てました。
金太郎は元気のいい男の子になりました。森に住む動物と遊んだり、相撲をしたりして毎日を過ごしていました。
「くまさん、次は君の番だ。さあ、かかってこい。」
熊も金太郎にはかないません。相撲のあとは森の中でかけっこです。鹿と競争です。木登りは猿から教わりました。川では大きな鯉が友達です。鯉にまたがると急流下りです。
雨の日は、洞窟の中で、ねずみやりすやキツネやたぬきやさるやうさぎやくまたちとおしゃべりです。金太郎は森の人気者です。
金太郎を見ながら、母上は神に祈りました。
kintaro2 「どうか素晴らしい武士になりますように。」
数年が過ぎ、春が来ました。ある日、金太郎は動物たちと隣りの山に探検に出かけました。大きな熊の背中にまたがり、おのを肩に背負い、その後をねずみやリスや猿やうさぎやキツネやタヌキやいのししや鹿がついていきます。みんな幸せでした。
がけに来ると下を激流が流れています。
「流れが速くて川は渡れない。」と金太郎。
「あの大きな木を倒して橋を作りましょう。」と熊は木を押しましたがびくともしません。押しても葉っぱが揺れるだけです。
「よし、私がやってみよう。」と金太郎は大きな木の前に立ち、力一杯押し始めました。するとどうでしょう、木が傾き、大きな音とともに倒れ川の上にかかりました。みんな大喜びです。すると後ろから声がしました。
「ものすごい力だ。」
そこには立派な武士とその家来が立っていました。
「私は源頼光と申すものです。私の家来になりませんか。」
「私は武士になれるのですか。」
「あなたならきっとすばらしい武士になれるでしょう。」
金太郎は母上のところに帰るとこの話をしました。
kintaro3 「私は父上のような立派な武士になりとうございます。」
別れるのはつらいけれども母上の目からは喜びの涙が流れました。
山を去るとき、母上だけでなく動物たちも金太郎をさびしそうに見送りました。
「母上ありがとうございました。ご恩は決して忘れません。かならずお向かいに参ります。 」金太郎は何度も何度も手を振りました。
数年が過ぎ、金太郎は坂田金時という武士になりました。ご主人の忠実な四人の家来に選ばれ、大江山に住む鬼も退治しました。
その後、京に母上を迎え幸せに暮らしました。(2002.2.24)

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