
七福神
むかし、むかし、ある所におじいさんとおばあさんが住んでいました。睦月(1月)のある雪の日のことでした。七福神が家を訪れました。二人は、とても貧しく、どうもてなしたらよいのかわかりませんでした。
「七福神さま、この大雪の中、わざわざおいで下さりまして、誠にありがとうございますだ。」とおじいさん。
「雪の降りが強いので、何か被るものを借りようと思って寄らせていただきました。」と一人の神様。
二人は、家中をさがして、どうにか蓑と笠を四つ見つけましたが、あと三つは見つかりませんでした。
それでも二人は、さらにさがして、破れた紙笠を二つ見つけることができました。でも、神様一人だけ、まだ被るものがなく、雪に中に立っています。
二人は、さらに、家の中や外を必死にさがして、ぼろぼろの蓑をさがすことができました。
「あった。あった。」とおばあさんは言って、神様に渡しました。
「誠にかたじけない。」と神様たちは言うと、大雪の中、笑顔で家をあとにしました。
「お元気で。おたっしゃで。」と二人は、何度も何度もお辞儀をして、七福神を見送りました。
「今日は、よいことをしたのでとても幸せじゃ。」と二人はともども言いました。
そして春がきて、夏がきて、秋がきて、冬がきて、大晦日になりました。
おじいさんはおばあさんに言いました。
「残念ながら、何もなくて新年の準備ができないな。」
とその時です。誰かが表戸の所にいるのを耳にしました。おばあさんが戸を開けると、そこには七福神が立っておりました。睦月の雪の日お見えになった神様たちです。
「おじいさん、おばあさん。今日は、今年の初めお世話になったお礼に訪れました。」と一人の神様。
「おじいさん、おばあさん。何かほしい物はありますか。ほしい物があったら、遠慮なくいって下さい。」と別の神様。
おじいさんは、神様に言いました。
「またおいで下さりまして誠にありがとうございますだ。実は、貧しくて、お金も米も、何もありませんじゃ。」
神様は相談すると、一人の神様がおじいさんに打ちでの小槌を手渡しました。
「この小槌でほしい物は何でも手に入るぞ。」
神様たちは家を去って行きましたが、一人の神様だけが、まだそこにいました。ぼろぼろの蓑を最後に渡した神様でした。
「他にほしい物はありませんか。言って下さい。」
「私たちは、もう年ですけど、実は、子供が欲しいと思っております。」とおばあさんが恥ずかしげに言いました。
「それでしたら、明日の朝、元旦、お日様が昇るとき、二人でこう言いなさい。『あけましておめでとうございます。子供ができますように。』二人は、若がえって、子宝に恵まれるでしょう。」
元旦を迎えました。二人は声をそろえて言いました。
「あけましておめでとうございます。子供ができますように。」神様に言われたように、みつめあいながら。
するとどうでしょう。あっと言う間に、二人は若がえりました。
まもなく、二人は、女の子が一人と男の子が二人を、授かりました。めでたし、めでたし。(2003.12.31)
七福神:大黒天(金)恵比寿天(幸)福禄寿(賢)毘沙門天(戦)弁才天(愛)布袋(運)寿老人(命)