
流れ星
冬の寒い寒い夜、木枯しが空の上の方まで吹き上げていました。そこでは、一列に並んだ小さな三つの星がけんかをしていました。
いつもはとても仲が良いのですが、真ん中の星が寒い寒いと言うので両わきの星がいじめたのです。
五位鷺(ごいさぎ)が、下のほうの凍った田圃(たんぼ)で 「キヨォ」と鳴きました。すると、いじめられた星は、スーッと滑るように降りて行き、見えなくなりました。
「どこに行ったんだ?」
「ひと言もいわないで・・・」
「あまりの寒さに手ぶくろを買いに行ったに違いない。」
「きっとそうだ。じきに戻ってくるよ。」
二つの星は、消えた星が心配で、こんなことを話しました。心の中では、あまりにいじめられたので逃げてしまったのかもしれないと思っていました。
消えた星は結局戻って来ませんでした。流れ星になったのです。
ひと月が過ぎました。その夜、二つの星は押し黙って、消えた星を見つけようとあちこち見下ろしていました。
「ほら、あそこにいる!」
「ほんと?どこに?」
「ほら、あそこだよ。」
ずっと下の方の、とあるまちの、細い道の上で何かが光っていました。
「見に行こう。」
「そうしよう。」
二つの星は、空のはるか上のほうから、木枯しの吹くまちへ降りて行きました。
でも、がっかりしました。
道の上で光っていたのは仲間の星ではなく、割れたガラスのかけらでした。
田圃の五位鷺が、その夜も 「キヨォ」と鳴きました。(kudos)
原作:新美南吉(1913-1943)