雀と啄木鳥と山鳩

すずめときつつき
sparrow むかし、むかし、姉と妹がおりました。姉はキツツキ、妹はスズメと言う名前でした。
姉は、わがままで欲張りでした。妹は、親切で働き者でした。
ある日のことです。二人は,大きな呉服屋に着物の布を買いに行きました。ご主人は自分で着物を作るように薦め、二人は白い布を買いました。そして朝から晩まで、着物を縫いました。そして着物を染めようという時、『田舎の父が急病にて、すぐ帰れ。』という手紙が届きました。
妹はすぐに戻りたいと思いましが、姉は着物が出来あがるまでは戻らない、と言って、着物に没頭しました。
妹は、一人で帰ることにしました。川を越え、山を越え、谷を越え、白い着物はすっかり汚れてしまいました。でもやっとのことで、お父さんの死に目に会うことができました。
お父さんが亡くなってから数日後、姉がきれいな着物を着て戻ってきました。妹は、着物を自慢する姉を見て、とても悲しく思いました。すると、どこからとなく声が聞こえて来ました。
「キツツキよ、お前は父親より着物の方を選んだ。お前はきれいな着物をいつも着ててよいが、お前は、木をつついて虫を食べなければならない。
スズメよ、お前は、とても心やさしい。お前の着物は汚れてしまったが、お前は畑の作物はもちろん何でも食べてよかろう。」
声が終わるやいなや、二人は、啄木鳥と雀に変わっていました。
美しい啄木鳥は森の木をつついては虫を食べています。汚い雀は畑でいろいろなものを食べています。

やまばと
yamabato むかし、むかし、いつも言われたことと反対のことをする男の子がいました。
山に行けと言われれば、川に行き、畑に行けと言われれば、たんぼに行きます。とても臍曲がりの男の子でした。
父親は、息子のことを心配するあまり、病にかかり、とうとう亡くなってしまいました。
今わの際に、父親は、息子は決して言うことを聞かないと思い、わざと、こう言いました。
「わしが死んだら、川の近くに埋めてくれ。」と。
男の子は父親が亡くなって初めて、自分が間違っていたことに気がつきました。
「おらが悪かった。おとう、許してけれ。許してけれ。」
男の子は、父親に言われたとおり川の近くに墓を造りました。でも雨が降ると、川が土手まであふれてきます。男の子は心配でたまりません。
ある日のことです。雨がとても多く降り始めました。
男の子は川に走りました。お墓につくと雨が止みました。でも家に戻ると、また雨が降ってきました。男の子はまた川に走りました。お墓につくと雨が止みます。でも家に戻ると、また雨が降ってきます。また男の子は川に走りました。でもお墓につくと雨が止みます。でも家に戻ると、また雨が降ってきます。
男は、川と家の間を行ったり来たり、もうヘトヘトです。
「おとう。鳥になりてえだ。」
男の子が、そう願うと、空へ上がり、鳥に変わっているではありませんか。
山鳩は雨が降りそうになると、父親(てて親)のことを思って、「テテポッポ、テテポッポ」とさえずります。(2004.2.11)

suzume