たから下駄

むかし、むかし、ある所に、心やさしい子供が住んでいました。でも,子供のおじは欲張りでした。
お母さんが、病気で床にふしているので、子供はおじの所へ行ってお金を借りました。でも母の病気が治らないまま、お金を使い果たしてしまいました。
そこで子供は再び、おじの所へお金を借りに行きました。
「おじさん、お母さんはまだよくなりません。お金がかかります。またお金を貸して下さい。」
「お金を返せない者には、お金は貸せないな。」と言って、おじはお金を貸してくれませんでした。
子供は、帰り道、大きな木の下で、どうしたら良いのか途方に暮れていると、いつの間にか眠ってしまいました。夢を見ました。
神主のおじいさんが出てきました。
「若者よ。何をそんなに深刻に考えておる。」
「お母さんが病気でお金に困っております。」
おじいさんは、風呂敷から下駄を一足取り出しました。二つの下駄の大きさが少し違っていました。
「この下駄を履いてみなさい。歩きづらくて、すぐ転がってしまいます。転がると、下駄からお金が出てきます。でも転がる度に背が小さくなります。困った時だけ転がりなさい。」
子供が、目を覚ますと、何と下駄があるではありませんか。おじいさんの言ったことは本当なのでしょうか。下駄を履いて歩いてみると、すぐに転がってしまいました。すると下駄の下にお金がありました。子供は、さっそくお母さんのくすりと米を少々買いました。
数日経った日のことです。おじが、貸したお金を取りにやってきました。
子供は、下駄のことをおじに話しました。
「そいつはすごい。よし、お金の代わりにその下駄をよこしな。」
clogs 「だめだ。この下駄は絶対だめです。」
おじは話を聞こうとしませんでした。結局下駄を取り上げると家に帰ってしまいました。
家に帰ったおじは、さっそく部屋の中で下駄を履いてみました。そして畳の上で何度も転がりました。部屋中、お金が一杯になって、大満足です。でも転がる度に、背がどんどん小さくなって行くのに気がつきませんでした。
子供は、おじのことが心配になって、行ってみました。
「おじさん。どこにいるんだい。」数回聞きました。
「ここだよ。ここだよ。」
子供は、小さな声のする方へ行ってみました。お金であふれた部屋のすみで、小さくなったおじが何度も何度も転がっているではありませんか。(2004.8.16)

treasure clogs