たぬきとたにし

raccoon むかし、むかし、たぬきさんが田舎道を急いでいました。田んぼの所に来ると、誰かに呼びとめられました。
「たぬきさん、どこへ行くの。」
たぬきさんは、びっくりして立ち止まりました。すると、たにしさんが足下にいました。
「町の神社にお参りに行くんだ。」
torii 「わあ、本当。私も行こうと思っていたの。たぬきさん、鳥居の所まで、私と競争しない。」
「僕が君と、たにしさんと競争だって。ばからしい。」と言うと、たぬきさんは町に向かって駆け出しました。でも、たにしさんは、ちゃっかりたぬきさんのしっぽにしがみつきました。
たぬきさんは、どんどん駆けて行き、鳥居の所につきました。
「遅いわね。」とたにしさんが、しっぽにつかまったまま言いました。
「誰だよ。」とたぬきさんが振り向きざま、しっぽを鳥居の柱にぶつけてしまいました。
たにしさんは、鳥居を通り抜け、道に投げ出されました。そして、殻がこなごなに割れてしまいました。
たぬきさんは、通りの向こうの道に、たにしさんが座っているのを見て驚きました。
「私のほうが早かったわよ。とても一生懸命走ったので、熱くなったの。だから、殻を脱いだの。もう三十分も待っているのよ。」
たぬきさんとたにしさんは、とても仲良しになりました。(2004.1.13)

raccoon and snail