
海から来たお嫁さま
むかし、むかし、あるところに若者とその母が住んでいました。とても貧しく、食べるものもほとんどなく、土地もありませんでした。山のきのこを売って暮らしていました。
ある日、若者は、町で花だけ売れて帰る途中、浜辺で海を眺めていました。
「きのこを家に持ち帰ってもどうしょうもないな。海に住んでいる神様にやろう。」
若者は、海に遠く投げ込みました。きのこはゆっくりと沈んでいきました。すると、大きなかめが海から顔を出し、言いました。
「きのこ沢山ありがとう。竜宮王からの伝言で、あなたを竜宮城にご招待しろ、とのことです。」
「是非とも。でも竜宮は遠くて、時間がかかる、と聞いていますが。」
「大丈夫。僕の背中に乗って、目を閉じれば、もう竜宮城だ。」
若者は、かめの背中に乗って目を閉じました。息つく間もなく、竜宮城に到着です。かめは若者に言いました。
「もし王様に、何が欲しいか、と聞かれたら、きれいな嫁が欲しい、と答えなさい。」
若者は、豪華な食事や海の音楽や、鯛や平目の踊りを三日間楽しみました。城を出る時、王が言いました。
「お土産をやろう。何が欲しい。」
「きれいなお嫁が欲しいです。」とかめに言われたように言いました。
若者ときれいなお嫁さんはかめの背に乗って城を去りました。
驚いたことに、海で三日過ごしている間に三年が過ぎていました。母親は病気で二年間床に臥していました。
「おかあ、許してくれ。俺のせいだ。一人残して、海に行ってしまったからだ。」
嫁は、夫が泣いているのを見て、こう言いました。
「泣かないで。お母さんの病気を治してあげるわ。」
嫁は、二、三回息を吹きかけると、お母さんは、目を開け、ふっと息をすると、元気に立ち上がりました。
でも一緒に暮らす家はありませんでした。森を伐採し、土地を用意しました。嫁は、そでから小さな木槌を取り出すと、大きな声で、「大きな家、出て来い。」と木槌をふりました。
すると、目の前に大きな素晴らしい家が現われました。お米や着物も木槌で出てきました。
まもなく若者夫婦はお金持ちになり、嫁は国一番の美しく、素晴らしい妻として有名になりました。うわさは領主まで届き、若者を城に呼び寄せると、こう言いました。
「お前の妻を、側妻(そばめ)にしたい。明日までに米俵百表用意できなければ、女を連れて来い。」
若者は、どうしたらよいか途方に暮れ、妻に話しました。
「心配しなくても大丈夫ですよ。簡単よ。」
妻は、海辺に行くと、手を叩いて、お願いしました。すると、米俵が海から家の方に次から次へと百表飛んで行きました。
若者は領主に言いました。
「百表用意できました。家に来てください。」
領主は、不思議な思いで、五十頭の馬を集めて、俵を城まで運ばせました。
若者夫婦は平和な日々を三ヶ月過ごしました。
ある日、領主は再び領主を城に呼び寄せ、命じました。
「是非とも、そなたの妻を側妻としたい。明日までに、草履を千足持ってこられなければ、妻を連れて来い。」
若者は、どうしたらよいか途方に暮れ、妻に話しました。
「心配しなくても大丈夫ですよ。簡単よ。」
妻は、海辺に行くと、手を叩いて、お願いしました。すると、草履が海から家の方に次から次へと千足飛んで行きました。
若者は喜びいさんで城に行き、領主に言いました。
「草履千足用意できました。家へどうぞ。」
領主は、不思議な思いで、家臣を集めて、草履千足を城まで運ばせました。
若者夫婦は平和な日々を三ヶ月過ごしました。
その年の大晦日、領主は若者を三度(みたび)城に呼び、命じました。
「どうしても、そなたの奥方を側妻としたい。家臣千人で夕食にうかがう。千人分の料理と酒千本用意できなければ、そなたの奥方をよこせ。」
まさにその日、妻は、海辺に行くと、手を叩いて、お願いしました。すると、千人分の料理と酒千本が家の庭に飛んでいきました。まもなく、領主と家臣が家にやって来て、庭で料理と酒瓶の前にすわりました。
領主は、美しい妻に言いました。
「そなたを側妻にしたい。踊りを見せてもらいたい。もし踊れなければ、覚悟してもらう。」
「どんな踊りをすればよいのでしょうか。」
「そなたには魔力があるとのこと。是非見せてもらいたい。」
妻は、両袖から大きな箱と小さな箱を取り出しました。
「まず最初に、小さい箱を開けます。」
箱を開けると、何千という踊り子が現われ、歌や踊りを始めました。
「大きい箱も開けてくれ。」と領主は女に言いました。
「これを開けると、とても危険です。私にも何が出てくるのかわかりません。開けたら、命がないかも知れませんよ。」
「家来がここに千人おる。誰が出てきても、大丈夫だ。すぐ開けろ。」
大きな箱を開けるやいなや、刀を持った何千人もの侍が飛び出し、領主と家臣は殺されてしまいました。(Kudos)