
夢を買う
むかし、むかし、絵描きと商人が野原の木陰で休んでいました。二人は打ち解けるとお互いの身の打ち話をし始めました。
商人は商いに失敗し、今は小銭しかありません。絵描きは彼の話を聞きながらうとうとし始めました。
不思議なことが起きたのは、その時でした。一匹のアブがねている絵描きの鼻から出てきたではありませんか。どこかへ飛んで行き、しばらくするとまた鼻の中に戻って行きました。
絵描きは、目が覚めると、不思議な夢を見た、と言いました。
その夢とは、こんな夢でした。
大金持ちが自分の知らない遠いところに住んでいて、庭には白いツバキの花が咲いている。アブがその下を飛び回るので、自分はそこを掘ってみる。すると、金貨の入った壷が出てくる、というものでした。
商人は、その夢に大層興味を持ち、その夢を小銭で買うことにしました。
さっそく、商人は、お金持ちの家を探し始めました。どんどん歩いて行くと、絵描きが話したような家を見つけました。彼は、その家で働くことにしました。
春が来て、ツバキの花が咲き始めましたが、どれも赤色でした。がっかりしましたが、次の春まで待つことにしました。
すると、どうでしょう。ついに赤いツバキの中に、一本の白いツバキの花が咲きました。さっそく、その下を掘ってみると金貨の入った壷が出てきました。夢のとおりでした。
商人は、お金持ちになって、買った夢に感謝しました。(2003.12.31)